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源氏物語 巻六
【目次】

若菜上   若菜下

源氏と女三宮の結婚により栄華を極めた源氏の人生に暗雲が・・・

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若菜上(わかな じょう)

源氏三十九歳から四十一歳春までの物語

登場人物 

柏木(かしわぎ) 内大臣(頭の中将)の息子。女三宮との結婚を望んでいたが、思いは叶わなかった。源氏と結婚した三宮を偶然見た事から魂を奪われてしまう。


【あらすじ】

六条の院へ御幸した後、朱雀院の病が重くなります。すでに、帝の位を冷泉帝ゆずりましたし、兼ねてから望んでいた出家に向けて準備を始めます。
唯一つ心配なことは、溺愛している娘女三宮の将来です。母も亡くなり頼りになる後見人もなく、まだ十四歳の娘を是非ともしっかりと後見してくれる人物は誰か、蛍の兵部宮、夕霧、柏木など候補者は数多いるものの、迷いに迷った挙句、一番頼もしいのは源氏との結論に達します。

源氏は、この申し出を辞退するつもりでした。今、六条の院は、育ての親紫の上と、生みの親明石の君が、お互いの心を思いやり穏やかな日々が続いていますので、わざわざ、波風を立てる原因を作ることもありません。

源氏は、女三宮が、永遠に忘れられない藤壺の中宮の姪であることと、その若さに心が揺れていましたので、女三宮の裳着の式を済ませて、出家した朱雀院を見舞った折、断り切れないと言うことにして、結婚を承諾します。源氏三十九歳の年の暮れです。

結婚を承諾した翌日、源氏に打ち明けられた紫の上の驚きは大変なものでしたが、表面は冷静を装います。
女三宮の噂は耳にしていましたが、まさかそれは無いのではと思っていました。長い年月、源氏の正妻の立場にあった紫の上ですが、内親王である女三宮は最高の身分ですから、当然正妻の座を失うことになります。
思いがけない運命を受け入れなければならない、自分の弱い立場を痛感し、紫の上の深い苦悩が始まります。

年が明け、源氏四十歳の賀を祝い、真っ先に玉鬘が若菜を献じ賀宴を催しました。
あれほど嫌っていたはずの玉鬘は、黒髪左大将との間に二人の男子を産み北の方として暮らしています。

二月十日すぎに女三宮が六条院に降嫁してきました。連日続く婚礼の宴、紫の上は、同情されるのは惨めだと、苦悩を内に秘めて、婚儀の手伝いを積極的におこないます。
源氏は、あまりにも幼い女三宮に失望すると共に、改めて紫の上の魅力に気づきますが、紫の上の苦悩はあまりにも大きく二人の溝を埋めることは出来ません。

朧月夜の君は朱雀院と一緒に出家することを望みましたが、院に許されず、里である右大臣邸に住んでおりました。今は、自由の身である朧月夜です。再び源氏との密会を重ねます。
源氏に絶望している紫の上の心は、ますます離れて行きます。

三月末のうららかな日に、六条の院で蹴鞠の会があり、夕霧や柏木も参加していました。その夕暮れ、女三宮の住む御殿の前で、夕霧と柏木が休んでいると、三宮が飼っている「唐猫」が奥から走り出てきて御簾の紐を引っかけめくれ上がってしまいました。
御簾の向こうに立っている女三宮を垣間見てしまった柏木は、一目惚れしてしまいます。
柏木は以前から女三宮との結婚を望んでいましたが、相手が源氏では太刀打ちできなかっただけのことで、諦めきれずにおりましたから、まるで魂が抜けたようになっています。

柏木は、源氏が表面では女三宮を大事にしているが、実は紫の上を前にも増して愛しているという噂などを耳にするたび、女三宮への思いが募ります。



当時、新婚の三日間は男が女のもとへ通う習慣でした。三日目の夜に紫の上が書いた歌

** 目に近く移ればかはる世の中を行く末とほくたのみけるかな ** 
**  変わりゆく男女の仲とは知りながら行く末長くと信じていたよ(俵万智さん略) ** 


**  命こそ絶ゆとも絶えめさだめなき世のつねならぬなかのちぎりを(光源氏) ** 
**  
命なら絶える日もくる定めなき世の常ならぬ我々の愛(俵万智さん略) ** 


女三宮との結婚が源氏の悲劇の始まりとなる。何よりも大切で、なかけがえのない紫の上の心を失ってしまったこと。
準太上天皇の位も栄華も、人間の心に勝るものは無い。紫の上という現実の愛をないがしろにして、藤壺との幻想(女三宮)に負けてしまったのか。
源氏にとってはやはり藤壺が「永遠のひと」なのですね。



若菜下(わかな げ)

【あらすじ】

柏木の、女三宮への思いはつのりのつのって、叶えられない恋に悩み続けています。
初めて垣間見たとき、走り出てきた猫、せめて、彼女の飼っていたあの猫を手に入れたいものと、策略をめぐらせて、東宮を介して借り受けます。
思いが叶った柏木は、猫を三宮と思って抱いて寝たり、溺愛します。なんとも奇妙なことです。

四年の歳月が流れ、源氏四十六歳の年、在位十六年の冷泉帝は譲位し、朱雀院の皇子、今上帝が即位し、明石の女御の第一皇子が東宮になりました。

その年の十月、源氏は、紫の上や明石の女御達と住吉神社に参詣します。明石の入道が長年住吉神社を信仰していたおかげで、明石の女御の皇子が東宮になれたものと、願ほどきの参詣です。
女三宮は二品に叙され、さらに、格式が高くなります。
紫の上と源氏の夫婦仲は、ことさら良いように見えますが、紫の上は、まわりの女君たちの幸福を見るにつけ、我が身の不安定さが身にしみます。この頃になると源氏の愛情が離れてしまう前に出家したいと思うのですが、源氏は許しません。

二月に予定している朱雀院の五十の賀宴に向け、泊まり込みで女三宮に琴の伝授をします。
年が明け、源氏四十七歳、賀宴に先立ち六条の院女君達を集めて女楽を催します。華麗な催しの後に、源氏は紫の上と思い出話などしみじみと語り合います。そして過去の女達のことも細々と話すのでした。
源氏は、そのなかでも紫の上が理想の女だなどといいながら、その日は女三宮の所へ泊りに行ってしまいます。
その夜、紫の上が発病して回復が危ぶまれるほどの重病に陥り、朱雀院の賀宴は中止となりました。
源氏は、紫の上を二条院へ移して付きっきりで看病します。
女三宮のもとには、ぷっつりと行かなくなり、六条の院は火の消えたように淋しくなります。

柏木といえば、女三宮のことが忘れられず、縁談が持ち込まれても、耳を貸しません。しかし、今や中納言という高い地位に昇進していますから、いつまでも独身と言うわけにもいかず、仕方なく「女二宮」と結婚しますが、女三宮の腹違いの姉とは言え、更衣の娘ということで軽くみています。

賀茂の御禊(みそぎ)の前夜、女房達が見物の支度にかまけている隙に、小侍従の手引きで女三宮の御帳台の側まで入って行きます。
女三宮はぐっすり眠って、誰かいることに気がつきますが源氏と勘違いします。柏木は理性を失い三宮を犯してしまいます。
正気に戻ると、二人とも源氏を恐れ、三宮はまるで病人のようになってしまいます。柏木は精神的に追い込まれ父の邸から一歩も出られなくなります。

源氏は、女三宮が病気だというので、暫くぶりに六条の院へ帰るのですが、その夜紫の上が亡くなったという知らせがあり、源氏は驚いて二条院へとって返します。
もしかして、物の怪かもしれないと、懸命に加持させると、六条の御息所の死霊が現れ、源氏は慄然とします。かろうじて命をとりとめた紫の上ですが、一進一退で気が許せません。

女三宮は、柏木がその後も忍んでくるのを、疎ましく思いながら拒めず逢瀬を強いられていました。何と言うことか女三宮は望みもしない柏木の子を身ごもってしまいます。

夏の終わりころ、紫の上が小康状態なので、久々に女三宮を訪れ、彼女の懐妊をしり不審に思います。翌朝早く、二条院に帰ろうとしていた源氏は、茵の下に隠されている柏木の手紙を発見し、全てを知ってしまいます。
自尊心を傷つけられた源氏ですが、昔、自分と藤壺が父吉壺帝を裏切った事を思い、父帝は、全て承知の上で知らない振りをしていてくれたに違いないと考えると、申し訳なく気持ちが鬱鬱としています。

源氏の様子をみて、自分の看病でのために、女三宮に淋しい思いをさせているからに違いないとの思いから、彼女の所へ行ってあげるようにと言う紫の上の優しさに、源氏はますます愛情を感じます。

柏木は秘密の露見を聞かされると、身も凍るほどの恐ろしさに、これで自分の一生もお終いだと思います。
源氏は、表面上は女三宮のためにこれまで以上に大切そうにしているけれども、二人きりになるとひどく冷たいものでした。

その頃、朧月夜が突然出家します。驚いた源氏が法衣や調度品などを贈り、「自分のことも祈って欲しい。」という源氏に、朧月夜は「みんなのために祈るついでに祈ってあげます。」と冷たい返事をします。ここで長い二人の関係は終わりました。

延び延びになっていた朱雀院の五十の賀宴は、十二月二十五日と決められ、その試楽が行われる夜、源氏は無理に柏木を誘います。病をおして六条院に来た柏木のやつれ方に源氏も驚きますが、宴席で激しいいやみを浴びせかけます。
源氏の恐ろしさに怖じ気づいた柏木は、その夜から病気が重くなり、父大臣邸に引き取られます。柏木の病状は重くなるばかりで、親友の夕霧は見舞ってはおろおろするばかりです。

朱雀院の賀宴は、重病の柏木が欠席する中、暮れも押し迫った十二月二十五日にようやくではありますが、厳かに催されました。



身分の低い母から生まれた二宮に対する柏木の失礼な歌許せない!

** もろかづら落ち葉をなににひろひけむ名は睦ましきかざしなれども **
** 同じ枝の二人は姉妹であるけれど落ち葉のほうえお拾っちゃたよ(俵万智さん略) **



重病の紫の上が気がかりで心ここにあらずの源氏に対して源氏を引き留めるために女三宮が詠んだ歌。
結果的には、この夜泊った源氏に不倫の全てが露見してしまう。

** 夕霧に袖ぬらせとやひぐらしの鳴くを聞く聞く起きて行くらん **
** 涙して袖ぬらせとやひぐらしの鳴くのを聞いて帰り行く人(俵万智さん略) **


** 待つ里もいかが聞くらむかたがたに心さわがすひぐらしの声(源氏) **
** 待つ人も聞くひぐらしの声にして あっちこっちに乱れる心(俵万智さん略) **


巻六はこれにて終了


源氏のとびら U  P