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源氏物語 巻一
【目次】

桐壺    帚木    空蝉    夕顔     若紫

源氏の誕生とその母の死、元服を経て18歳までの物語

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桐壺(きりつぼ)

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桐壺帝(きりつぼてい) 当時の天皇で光源氏の実父、桐壺の更衣をこよなく愛する
桐壺の更衣(きりつぼのこうい) 桐壺帝の妻妾で(身分が低い)光源氏の生母、、嫉妬によるいじめによる心労から病に倒れ短い生涯を閉じる 
光源氏(ひかるげんじ) 主人公、希有な美貌と文武両道の才能に恵まれ、怪しい程魅力的で多感な人物
弘徽殿の女御(こきでんのにょうご) 桐壺帝の正妻で、嫉妬から桐壺の更衣をいじめる  
藤壺の宮(ふじつぼのみや) 桐壺の更衣亡き後、帝の女御となり、後に源氏と不倫関係に
葵の上(あおいのうえ) 源氏の正妻、桐壺帝の姪で左大臣の姫君、源氏元服の折に政略を結婚させられる


【あらすじ】

そのころ桐壺帝の後宮に、あまり高貴な家柄でもないのに帝にこよなく愛されている「桐壺の更衣」と呼ばれている人がおりました。自分こそは君寵第一とうぬぼれていた女御達から、激しい嫉妬の恨みを受けることになります。特に弘徽殿の女御のいじめは激しく、ストレスが積もり積もって、次第に病がちになり衰弱して行きました。

桐壺帝と桐壺の更衣のご縁が深かったのか、やがて、世にもないほど美しい玉のような男の御子、主人公「光源氏」の誕生です。すでに、弘徽殿には、一宮がおりました。帝は表向きは一宮を大切にしているが、若宮を秘蔵っ子として、限りなく愛しているのです。弘徽殿のいじめはいっそう激しくなり、気苦労が重なった更衣は、回復不能の重病に陥ります。この時代は、后妃といえども、宮中で死ぬことはタブーとされていましたから、更衣は息も絶え絶えになりながらも、退出して行かなければなりまんでした。
桐壺の更衣は、源氏が三才になった年に、とうとう死んでしまいます。帝は悲観のあまり茫然自失し引きこもって時を過ごすことになりました。
光源氏を生むためだけに存在したような儚い人生の桐壺、人間の嫉妬心とは、誠にお恐ろしいものです。

帝は若宮を無位の親王にはしたくないと、学問を習わせます。何につけても、際だって聡明なので、臣下にするのは惜しいけれども即位のことで疑いをかけられるに違いないと考え、臣籍にして源氏の性を与えたのです。

更衣の死後七年経ち、帝は、亡き更衣に瓜二つの姫君(桐壺の宮)を迎えてすっかり元気を取り戻します。源氏の君は、亡き母に似ていると言う藤壺の宮に、母親を感じて居るのでした。

光源氏は十二才になり、元服すると同時に、政略結婚をさせられます。左大臣の姫君で”葵の上”と言う、年上で気が強く、おまけに気位が高い女性です。案の定愛情は沸きません。いつしか、藤壺の宮に憧れ恋するようになります。



后妃であっても、宮中で死ぬことはタブーだった時代、更衣が宮中から退出するとき息も絶え絶えに詠んだ歌

       ** 限りとて別るる道の悲しきに いかまひしきは命なりけり **
       ** 限りある命だけれどどうしても今は生きたいあなたのために (俵万智さんの訳) **




帚木(ははきぎ)

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頭の中将(とうのちゅうじょう) 左大臣の嫡男で、源氏の妻「葵の上」の兄でもあり、源氏の親友
佐馬の頭(さまのかみ) 粋人で有名、この夜は女性談義となる。つまり有名な「雨夜の品定め」
籐式部(とうしきぶ) 佐馬の頭同様粋人
空蝉(うつせみ) 源氏の家来で受領の妻、源氏に言い寄られる


【あらすじ】

五月雨が続くある夜のこと、、源氏の宿直所に、時間を持てあましている男達がやってきます。義兄である頭の中将と、佐馬の頭、籐式部の三人です。この殿方は、負けず劣らずの、プレイボーイで、女談義が延々と続くのです。つまり、有名な「雨夜の品定め」です。
それぞれの、経験談のなかでも、頭の中将の苦い思い出は、子供まで生まれたのに、行方をくらましてしまった女がいたと言う事、彼女が、後々、源氏の相手として登場する夕顔なのです。
談義が白熱するも、源氏の君は、あまり興味がありません。そうです、彼の心は藤壺の宮で一杯なのですから。

翌日、雨が止み、暫くぶりに左大臣の屋敷へ行くと、方角が悪いと言うので、紀伊の守の別邸に行くことになりました。そこで出会ったのが、紀伊の守の父、伊予の介の若い後妻「空蝉」です。なんと、源氏はいやがる「空蝉」を無理に犯してしまいます。彼女はその後も、抵抗し続けるのです。女性に拒まれるなど、源氏にとって、初めてのことです。



夕顔が連れない頭の中将に対して詠んだ歌

** 山がつの垣は荒るともをりをりにあはれはかけよ撫子の露 **
** 山里の家の垣根は荒れるとも撫子の花を忘れないでね(俵万智さん訳) **

** うち払う袖も露けきとこなつに嵐吹きそふ秋も来にけり **
** 塵払うベッドに涙の川流れ嵐まで吹く秋が来ました(俵万智さん訳) **




空蝉(うつせみ)

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空蝉(うつせみ) 言い寄る源氏から、必死に逃れるものの、源氏への恋しい気持ちを忍んでいる。
軒端の荻(のきばのおぎ) 空蝉の義娘で、源氏と関係を持ってしまうが、空蝉と人違いとは余りにも可愛そう。
小君(こぎみ) 空蝉の弟、諦めきれない源氏の為に、手引きをする。


【あらすじ】

空蝉は、言い寄る源氏から逃れホッとするものの、思いを残し憂鬱な日々です。一方、諦めきれずに居りました源氏は、紀伊の守の留守中、別邸に出向いたのです。

留守宅では、二人の女が碁を打っています。一人は空蝉、年増であまり器量の良くない人ですが、嗜み深そうです。もう一人は、軒端の荻という紀伊の守の妹君です。若くて華やかで、蓮っ葉な感じの女、源氏にとりましては、初めて見るタイプです。

その夜、空蝉の閨に忍び入る人の気配がします。覚えのある香です。源氏に気付いた空蝉は、単衣一枚をはおりそっと出てゆくのでした。源氏は、寝ている女に近づくと人違いに気がつきますが、目覚めた伊予の介の娘(軒端の荻)に「度々訪れたのは、貴女が目当てだった」などと言って、我が物にしてしまうのです。

空蝉が置いていった薄衣を持ち帰った源氏は、小君に手紙を託します。手紙を見た空蝉は「もし娘のころなら・・・」と源氏を忍びながら、いただいた手紙の懐紙の端に、返したい気持ちを人知れず書くのです。手紙は一方的なもので、空蝉の思いは源氏に伝わらないのが誠に切ないところです。

人違いを「公然と人に知られた仲よりも誰にも知られない秘密の恋こそ・・・・」などと、調子よくだまされてしまい、手紙ももらえない軒端の荻が哀れです。



逃げてしまった空蝉へ

** 空蝉の身をかへてける木の下になほ人がらのなつかしきかな(光源氏) **
** 抜け殻を残した人よ 身の内の人柄をこそ抱きたかりしお(俵万智さん訳) **


相手に通じない、空蝉のひとり切ない胸の内

** 空蝉の羽におく露の木がくれてしのびしのびにぬるる袖かな(空蝉) ** 
** 人知れず空蝉の羽におく露のようにこぼれる私の涙(俵万智さん訳) **




夕顔(ゆうがお)

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夕顔(ゆうがお) 頭の中将の子供を設けたれども、正妻に脅迫され姿を隠す。
六条御息所(ろくじょうのみやすどころ) 桐壺帝の弟宮の后で、容姿端麗にて頭脳明晰非の打ち所がない。夫の死後、源氏の愛人となる。
大弐の乳母(おおにのめのと) 源氏の乳母で現在は尼、重病にかかっている。
惟光(これみつ) 大弐の子で源氏の乳兄弟であり、側近。


【あらすじ】

六条の御息所にひそかに行かれる途中、今は尼になっているが、思い病に尾か犯されている大弐の乳母を見舞いに立ち寄ったときのことです。隣家の女たちが、垣根越しにこちらを、のぞき見しているようです。源氏は好奇心をかきたてられるのでした。
その塀に咲いている白い小さな花に目に留め、花の名を尋ねたことから、その屋の主である「夕顔」と運命的なの出会いをするのです。

正妻の葵の上とは、初めからあまりしっくり行っていませんし、六条御息所にもすこし、距離を置くようになり、憧れの藤壺の宮には、なかなか会うこともできずにおりました。雨夜の品定め以来、平凡な身分の女にまで興味を持つようになっています。身なりをやつし、深夜に出入りする念のいれようで、もしかしたら、「頭の中将が言っていた常夏の女ではないか」と思ったりするのですが、素性も解らない女に夢中です。

夕顔に逢えぬ夜は苦しくてどうにもならず、五条の院へ強引に連れて行ってしまいます。屋敷は気味が悪い程荒れ果ておりましたが、二人はそこで、永遠の愛を誓うのでした。

その夜の事、絶世の美女が枕元に座り、「私を捨て置いてこんな女と・・・」といいながら、夕顔に手をかけるのです。驚いて目を覚ますと明かりは消え真っ暗です。夕顔は恐怖におののきながら死んでしまいました。源氏の嘆きは大変なもので泣くばかりです。しかし、惟光に命じてなんとか弔いをすませると、夕顔と姉妹のように育った右近を二条に連れて行くことにしました。何度も振り返りながら帰る途中、加茂川の堤のあたりで、落馬してしまい、そのまま寝付いてしまいまったのです。
ようやく、病も回復した頃、右近の話で、夕顔はやはり「常夏の女」であり、女の子が居ることを知ります。源氏は子供を引き取りたいと考えるのです。

十月、空蝉は伊予の介と共に任地へ下ります。源氏は、餞別にとりわけ気を配ります。それと一緒に、思い出の空蝉の小袿も添えて贈りました。娘の軒端の荻も結婚して、源氏の元から去って行き、立冬の時雨空に、人を忍ぶ苦しさを知ったのです。



夕顔が源氏に贈った詩、当時は女の側から詩を贈ることは、異常な行為だったようです

** 心あてにそれかとぞ見る白露のひかりそへたる夕顔の花 ** 
** もしかしてそうなのかしらあの人は光かがやく夕顔の君(俵万智さん訳) ** 



これほど深い仲になって、隠し事は悪いと思い源氏は覆面を外します

美男子といわれのが当たり前の源氏に対して夕顔の詩はユーモアたっぷりです

** 夕霧に紐とく花は玉ぼこのたよりに見えしえにこそありけり(光源氏) **
** あの日あの時あの道で君に会ったからすべて見せあう今があるのさ(俵万智さん訳) **



** 光りありと見し夕顔の上露はたそかれ時のそらめなりけり(夕顔) **
** あの日あの道たそがれどきの横顔は今よりずっとハンサムだった(俵万智さん訳) **






若紫(わかむらさき)

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若紫(わかむらさき) 後の紫の上で、源氏の生涯の伴侶となる。恋しい藤壺の姪で藤壺によく似た美しい女性である。


【あらすじ】

源氏18才の時、「わらわ病」という熱病におかされて大変苦しんでおりました。当時病気は「もののけ」によると考えられておりまして、治療といえば、祈祷をすることでしたから、北山の高名な修行僧のところに行きました。
治療の合間に、あちらこちら散歩している途中、可愛らしい女の子を目にします。それは、恋しい藤壺の宮そっくりではありませんか、似ているはずです、藤壺の宮の姪だったのです。源氏は、早速少女の祖母で保護者である尼君に、結婚を前提に自分が後見人になりたいと申し出ますが、まだ、何も解らぬ子供です。当然のことながら、拒否されるのですが、いつの間にか少女も源氏を慕うようになっています。

病が回復して帰京し、宮中に参内します。源氏は丁度来合わた左大臣の邸へ行くのですが、葵の上とはお互いの心が疎遠になっておりますから、相変わらず冷たくあしらわれます。このような状況でもあり、源氏の関心はますます少女へ向けられ、北山に手紙を書くのでした。
この頃、病のため藤壺の宮が宮中より里帰りしたのです。すると、またまたしつこく迫り、とうとう関係してしまいます。この一度の過ちで藤壺のみやは、源氏の子供(後の冷泉帝)を宿してしまいます。

少女の祖母の尼君が他界しますと、父である兵部卿宮が引き取りに来ることになりました。それを知った源氏は、少女を強引に二条院に連れてきてしまいます。源氏は少女の遊び相手をしたりしながら、成長を気長に待つことにします。幼くて無邪気少女はすかり院の生活にとけこんでゆくのでした。この少女若紫こそ源氏の修正の伴侶となる紫の上なのです。



巻一はこれにて終了

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