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【あらすじ】 源氏も26才、暗い翳りはみるみる大きくなり、ライバル右大臣家が権力を手にします。 須磨の住居は風流できれいに整えられていましたものの、わびしい日々の連続で、慰めといえば、紫の上、藤壷宮、朧月夜、左大臣家の諸々の人達との便りしかありまんでした。 明石には桐壺更衣とは従兄弟にあたる、明石の入道という偏屈者がおりまして、娘は都の高貴な方と結婚させたいと常々思っていました。源氏の噂を聞くとこれ幸いとばかり、娘と会わせる行動に出ます。 親友「頭の中将」が今では宰相に昇進しています。「須磨へ行った事で罪に問われてもかまうものか。」と覚悟して、突然須磨の源氏の君を訪れて、つもる話が尽きることもなく一日過ごします。 三月一日の巳の日に突然暴風雨に見舞われ、雷が轟き、稲妻が光り、源氏の住まいも大被害を被ります。生きた心地もせずに過ごした明け方、異型のものが現れ、気味が悪くなった源氏は一刻もここには住みたくないと思うのです。
【登場人物】 系図へ
【あらすじ】 その夜、夢故桐壺院が現れて「ぐずぐずせずに、すぐに此の地を立ち去るように」と告げます。すると、翌朝明石の入道が船で迎えにきましたので、源氏は昨夜の夢の事を思い明石に移る事にします。 この夜、京都でも、朱雀帝の夢枕に故桐壺帝が立ちました。その後、帝は眼病になってしまいひどく苦しみます。 明石入道の住まいは大変立派な邸です。源氏はここに住み、別邸に住んでいる明石の姫と逢うことになるのですが、姫は気位が高くなかなか心を開いてはくれません。それでも、入道のとりなしで二人は結ばれます。 そんな折、帝から突然赦免されます。明石の君との別れに苦しみながらも、2年半ぶりに帰京する事になります。
【あらすじ】 夢にあらわれた桐壺院があの世で苦しんでいる姿を見た源氏は、法華八講を催し追善供養を行います。世間の誰もが源氏に靡き、源氏は完全に政界の実権を握ります。 二月、朱雀帝は譲位し、十一才の冷泉帝が即位します。藤壺は準太上天皇となり、遠慮なく参内し、冷泉帝と会うようになります。かつての側近達も政権に復帰します。 即位式から一ヶ月ほど経った日に明石の君に女の子が誕生すると、将来后となるべき姫のために乳母を選び明石へ赴かせます。このまま忘れられてしまうのではないかと、悩んでいた明石では心から感謝するのでした。 源氏は紫の上に事の全てを打ち明けます。「欲しいところに生まれないで、どうでもいいところに生まれて」などと、紫の上の心を逆撫でするような事を言う源氏、紫の上の心情は如何ばかりか。源氏は、嫉妬する紫の上の姿にますます魅力を感じるのでした。 その秋、源氏は住吉神社にお礼参りに詣でました。明石の君は毎年恒例の行事として春秋には住吉神社詣でをしておりました。偶然源氏の一行の華やかな様子を目にした明石の君は、我が身の低さを嘆きながら、そっと引き返してしまいます。 病に冒されている六条の御息女が出家したと知り源氏はショックを隠せない。源氏が見舞いに訪れると、辛うじて身を起こした御息女は、娘斎の宮の後見を依頼する。ただし、「愛人の一人にはしないでほしい」と思いがけないことを言うのです。御息女は、斎宮として長年神に仕えていた娘に源氏を用心するように娘に言っても、理解出来ないことを知っていました。 朱雀院が斎の宮を院の御所に迎えたいと望んでいることを知った源氏と藤壺の尼宮は、自分たちの野心のために、素知らぬ振りして、9歳も年下である冷泉帝の后として入内させようと画策する。
【あらすじ】 源氏が須磨で侘びしい暮らしを強いられている頃、すっかり忘れられてしまった末摘花、邸はさらに荒れ果て、盗人さえ寄りつかぬ程の悲惨極まりないものでしたが、宮家の姫君の誇りを持ち続け、上品さを失うことはありませんでした。 末摘花の叔母は、受領の妻となりかつて宮家から軽んじられていたことを根に持ち、意地悪を繰り返し、頼りにしていた女房まで自分の元に連れて行ってしまいます。荒れ果てた邸で寂しく一人源氏の訪れを待つ末摘花。 花散里を訪ねる途中、荒れ果てた邸の前を通り掛かると見覚えがあります。雑草をかき分けて訪れてみると、4年もの間じっと源氏の訪れを待っていた末摘花の純情にいたく感動します。 末摘花は、のちに、二条院に迎えられて生涯幸せに暮らします。
【あらすじ】 かつて、紀伊守の邸で、一夜限りの逢瀬でしたが、空蝉は源氏への思いを胸に秘めて、夫伊予の介とともに任地常陸国へ下っておりましたが、源氏が返り咲いた翌年に、任期を終えて帰京することになりました。 帰京する一行が、大津の逢坂の関にさしかかったとき、たまたま石山寺へ詣でる源氏の一行と出会います。 夫の常陸の介は歳の違う空蝉を案じ息子に託して世を去ります。勿論、源氏との事など何も知りません。
【あらすじ】 源氏と藤壺の女院の思惑どおり、六条御息女姫君は冷泉帝の後宮に入内します。源氏は、朱雀院の恋心を知りながらこの入台を強行したことを、院はどれほどくやしい思いをしているのだろうと気の毒に思います。 宮中で絵合が催されます。互いに、あらゆる手段で絵を集めますが、優劣つけがたく、いよいよ最後の一番になった時、源氏の須磨の日記が出品され、斎宮方が圧勝します。 源氏は、「地位も身分も高くなってしまった、栄華を貪ってばかりではいけない。」と、嵯峨の山里に御堂を建てますが、本当の心の内はわかりません。
【あらすじ】 二条の院も出来上がり、花散里を迎えます。明石の君を迎える算段でしたが、明石の君は、我が身の低さを思いなかなか決心がつきません。それでも、姫君の事を将来を思い悩みます。 源氏は明石に迎えを送ります。明石の君は母尼と伴い嵯峨野に移ります。明石の入道との別れは辛く悲しいものでした。 京に近いところに住みながら、明石の君はみしろ寂しい日々です。 姫君は三歳になっており、本当に可愛らしいさかりです。源氏は姫の将来のためには、紫の上に育てさせて紫の上の娘として入内させたいと考えます。 源氏は、紫の上の手前、嵯峨に御堂を造り、用事に託けて月二度ほど訪れるのがやっとのこと。明石の君はこれ以上は望めないと諦めながらも悩み苦しむのでした。
巻三はこれにて終了
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