【あらすじ】
玉鬘への求婚がいよいよ本格的に始まります。
思いがけない源氏の態度に対して、露骨に拒否することも出来ず、玉鬘は思い悩みます。
初夏のある日、源氏は、弟兵部卿宮が玉鬘を訪ねた折に、蛍を放ちその薄明かりで玉鬘の美しさを際だたせて、宮との交際をそそのかします。玉鬘の美しさに兵部卿宮は魂を奪われてしまいます。
玉鬘も源氏の求愛の煩わしさから逃れたい一心で、兵部宮に心が動いています。
五月の節句に花散る里の御殿の馬場で競射が行われるので、源氏は同僚や友人を連れてやって来まして、珍しくその夜は、花散る里のところに泊まります。
ついでに、玉鬘を見舞った源氏は、複雑で屈折した玉鬘への想いから、弟兵部宮をかなすようなことをします。
長い雨の季節、六条院の女君たちは、物語を読んだり、写したりしています。
源氏は、その様子を見て、玉鬘に「物語は虚構であっても、上手な作者の手によれば、歴史書よりも真実を書いている。」
と、自分の物語論を話します。
紫の上に対しては、姫の教育論を語るのでした。
源氏は、自分の経験から、夕霧を紫の上に近づけないように注意しています。
夕霧は雲居の雁を思い続けています。柏木は玉鬘への取り持ちを依頼しますが、夕霧はつげないのです。
内大臣は、自分の娘達が思い通りにならないので、昔、夕顔との間に生まれた娘の事を思い出し、探しはじめます。
占いによればあ、どうやら、誰かが養女にしているということでした
【あらすじ】
源氏三十六歳夏六月の酷暑の日、遊びに来た内大臣の子息たちから聞くことによれば、実子だと名乗り出た「近江の君」を最近内大臣が引き取ったが、教養もなく、早口で礼儀作法も知らず、うとまれていて、この非常識ぶりには、父である内大臣もお手上げとういことでした。
源氏は、玉鬘が実の娘だと知ったらどんなに驚き、喜ぶことかと思うのです。
夕暮れ、源氏は玉鬘をお訪れ、夕霧と雲居の雁を引き離した内大臣を快く思っていないことを話します。玉鬘は実父と源氏の間がしっくりいっていないことを知り思い悩みます。
源氏の玉鬘にたいする想いはつのるばかり、いっそのこと、蛍兵部卿の宮か黒髭の右大将と結婚させようかと、決心がつきません。
内大臣は、玉鬘の噂を聞くにつけ、不出来な我が娘近江君を引き取ったことを悔やみ、困りはてています。
雲居の雁の将来も心配でなりません。夕霧に許してもよいと思っていても、源氏の方はまるで無関心のようなのです。
【あらすじ】
源氏は、世間中で近江の君を笑いものにしているのは、何でもけじめををつけたがる、内大臣の性格によると、近江の君に同情しています。同じ立場でありながら、一方、玉鬘は、源氏に引き取られた我が身が、如何に大切に守られて来たことかと、改めて感謝し、少しづつ源氏に心を開いて行きます。
初秋の夕月の夜に、玉鬘のもとを訪れた源氏は、庭にたかれている篝火の煙にたとえて、切ない恋の想いを訴えます。
そこへ、夕霧のところへ来ていた柏木と弟の弁の少将がやって来ます。源氏は、彼らを招いて、琴や笛の合奏をさせます。
玉鬘は、身近に実の兄弟を見て、まだ見ぬ父の姿を思い浮かべるのでした。
何も知らない柏木は玉鬘を意識して琴に格別の想いをこめて弾きます。
【あらすじ】
秋八月、秋好中宮の御殿では、秋の花が見事に咲き誇り、人々を慰めていました。
ある日のこと、突然野分が吹き荒れ、この素晴らしい庭も、一夜しにてなぎ倒されてしまいました。
夕方六条の院を見舞った夕霧は、南の妻戸の開いている隙間から紫の上を見てしまい、目も眩むばかりの美しさに、すっかり魅せられてしまいます。源氏が、紫の上を見せないのも、無理からぬ事と思うのでした。
その夜、夕霧は六条院の花散る里を見舞い、春の御殿に行きます。源氏は夕霧の顔を見ると、夕霧が紫の上を見てしまったであろうことを察知します。
夕霧は紫の上を忘れることが出来ず、ずっと想い続けている雲居の雁のことさえ考えられない程です。
翌朝、夕霧は、源氏に従い風見舞いに、女君たちを訪ねます。源氏は玉鬘を抱き寄せ冗談のような求愛をします。それを見た夕霧は、親子と思えぬ態度に驚愕するです。
玉鬘の美しさは、まるで露を帯びた夕映えの八重山吹のようです。紫の上は華桜、明石の君は藤の花のように見えました。夕霧は雲居の雁を恋しく想い起こし恋文をかくのでした。
源氏三十六歳から三十七歳の二月までの物語
【あらすじ】
源氏は親として精一杯玉鬘の世話をしているものの、玉鬘への想いはつるばかり、さりとて、結婚する事も出来ません。
考えた末、尚侍にさせようと決心します。
その年の十二月、冷泉帝の大野原で鷹狩りをする行幸がありました。源氏に勧められて、見物に出掛けた玉鬘は、源氏と瓜二つで、たぐいまれな美しさの帝に感動します。若さでは源氏に勝っています。源氏から進められている尚侍として宮仕えしょうかと心を動かされます。
玉鬘が心を動かしたことで、早速準備に取りかかります。秋好む中宮の時と同じです。自分の恋しい人を我が子の嫁に推薦するのですから。入内する前に、裳着の儀を行うことにし、玉鬘について、真相を明かさなければなりません。そこで、腰結の役を内大臣に依頼しますが、大宮が病気との理由で断られてしまいます。
大宮の仲介で内大臣と話し合いがもたれます。玉鬘の事を聞いた内大臣の驚きは大きく、源氏に感謝しつつも、これまで隠し続けていた源氏を恨めしくも思うのでした。
翌年二月十六日、玉鬘の裳着の儀は盛大に行われ、宮仕えの準備はととのい、親子の対面も無事に修了します。
源氏三十七歳の八月から九月までの物語
【あらすじ】
玉鬘は悩んでおります。入内した後、寵愛を受けるような事があれば、すでに宮中にいる弘徽殿の女御や秋好中宮との関係はどうなるか、ますます言い寄ってくる源氏にも、実父の内大臣にも心から相談できず、想い悩む日々です。
姉ではないと知った夕霧は、源氏の使者として玉鬘を訪れた時、欄の花に託して自分の心を訴えます。玉鬘は源氏親子からの求愛にえきへきして、奥に逃げ込んでしまいます。
内大臣が源氏の心を見抜いていることを知ると、し、生真面目な夕霧は、恋を打ち明けたことを後悔して、忠実な奉仕者になろうと決心します。
参内は十月と決まりました。
求婚者たちは、その前にどうにかしょうと、それぞれに恋文を寄せるのですが、玉鬘は見ようともせず、蛍兵部卿宮にだけは返歌をします。
髭黒の大将は特に熱心で、内大臣に働きかけますが、濃い髭の風貌を嫌う玉鬘は見向きもしません。
【あらすじ】
突然玉鬘が髪黒の大将の手に落ちています。あれほど嫌われていたはずの髪黒大将と、何時どのようにしてなのか、描写が何もありません。何とも不思議なところです。
髪黒大将は天にも昇ったように有頂天ですが、玉鬘は悲しくて情けなくてすっかり沈み込んでおります。
源氏も、寄りによってこの男か驚きを隠せません。困惑しながらも結婚を認めざるを得ません。
一方、内大臣は髪黒大将を高く買っていましたので内心ほっとしれいます。
冷泉帝もまた、玉鬘を入内させたかったものですから、残念でなりません。しかし、高宮への入内ではありませんから、尚侍として予定通り参内することになりました。
黒髪大将は、当然出仕には反対です。邸を改築して妻を迎える準備をを整え、如何にして源氏から引き離すか、機会を伺っております。
髪黒大将には長年連れ添った妻北の方がおりますが、近年物の怪に取りつかれ、美しく淑やかな人がはまるで別人のようになってしましました。玉鬘に夢中になっている髪黒大将は、病身の妻を気遣うこともなくなっています。
玉鬘のことを知った式部卿宮は、怒り心頭北の方を自宅にひきとろうとします。髪黒大将は妻を哀れと思いますが心は離れるばかりです。
雪の夜、、突然錯乱状態になった北の方は、玉鬘を訪れようとしていた髪黒大将に薫物の灰を浴びせます。
正気を取り戻した北の方は、後ろ髪をひかれる想いで、父式部卿宮のもとに帰る決心をします。
父髪黒大将のことが大好きだった娘「真木柱」も泣きながら去ってゆきました。
式部卿宮はこの件に関しては、源氏が仕組んだことに違いないと誤解していますので、源氏と式部卿宮家との確執となり、玉鬘の悩みの種となります。
新年になり、髪黒大将も玉鬘の参内をしぶしぶ認めます。参内は、源氏、内大臣、髪黒大将の後見により、盛大に行われます。内大臣は源氏に心から感謝します。
冷泉帝もまだ玉鬘に心をよせていますし、光兵部卿宮も恋文を送る状態が相変わらず続いていることから、髪黒大将は気が気ではではありません。しこで一計を案じ、強引に玉鬘を邸に連れ帰ってしまいます。
さすがの源氏も、この予想外の行動には為す術がありません。
源氏三十九歳の正月から三月までの物語
【あらすじ】
明石の姫君が十一歳になりました。姫君は間もなく東宮妃として入内することに決まっています。
そこで、裳着の式が予定されていました。二月十日、蛍兵部卿宮を六条の院に迎えて薫物合わせが行われ、翌十一日の夜には、裳着の式が行われました。秋好中宮に腰結役を依頼して華を添えました。
二月二余日、東宮の元服がありましたが、準備が念入りに行われて、四月に入内することになりました。
明石の君の入内のこともあり、内大臣は雲居の雁のことが気にかかって仕方がありません。
源氏も夕霧を案じて、男は結婚は大事、社会的信用も増すものだと、縁談を持ちかけますが、夕霧は雲居の雁を忘れられません。
内大臣は、夕霧の縁談を耳にして気落ちするのでした。雲居の雁もまた噂を聞いて悩んでおりました。
夕霧は心を込めて、雲居の雁に手紙を送りますが、どうやら誤解されているようで、困惑します。
【あらすじ】
内大臣は中務の宮が夕霧を婿に望んでいる事を知ります。自分が夕霧と雲居の雁の中の恋を邪魔したことを後悔していて、どうにか雲居の雁と夕霧を結婚させたいと考えていた内大臣は、母大宮の三回忌に、夕霧に話しかける機会を得ます。
四月のはじめ、内大臣は、藤の花の宴に夕霧を招きます。源氏は内大臣の心を思い、夕霧に自分の立派な衣装を着せて行かせます。
その夜、二人は、七年という長い年月を経て目出度く結ばれました。
四月二十日すぎ、いよいよ明石の姫君の入内となりました。
紫の上は、大堰の雪の日に別れて以来、同じ屋根の下にいながら、我が子に会うことも許されなかった明石の君の心情を思い、これを機に姫君の後見役に推薦します。
紫の上と明石の君が、初めて対面します。お互いに相手の素晴らしさを認め合い、源氏が愛するのは当然だと思うのでした。
源氏の四十の賀の準備が進められているなか、源氏は、準太上天皇の地位に上り、内大臣は大政大臣に、夕霧は中納言になります。
夕霧と雲居の雁は結婚して、三条に移り住みます。
十月下旬、六条院に行先があり、冷泉帝、朱雀院も同行して、晴れやかな盛儀となりました。
今こそ、源氏栄華の極致です。「桐壺」に始まり「藤の裏葉」で、光源氏半生の終わりを迎えます。
生涯の一区切りとなる、この時点での登場人物の年齢
光源氏三十九歳 ・ 紫の上三十一歳 ・ 秋好中宮三十歳 ・ 明石の君三十歳
夕霧十八歳 ・ 雲居の雁二十歳 ・ 明石の姫君十一歳
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巻五藤裏葉の帖で源氏物語の第一部が修了となる
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